存在感が薄い?ユーロの今後 その5

前回に続いて、ヨーロッパの不安定化に伴うユーロとの付き合い方についての解説です。ユーロはそもそも仮想通貨のような存在から始まった統一通貨なので、特定の国の経済を背負っているわけではありません。それが最もユーロにとってはアキレス腱なのですが、それは逆にユーロの安定材料でもあります。

ここ数年のユーロドル相場を見ると、ユーロとドルのシーソーゲームは比較的安定していることが分かります。最高値で1.17台、最安値で1.03台。これを安定していると言い切ってしまうのは乱暴かも知れませんが、これだけ世界的に紆余曲折があった上での変動幅だと考えると、やはり流動性の高い通貨ペアであることが分かります。

もうひとつのユーロ円を見てみると、こちらは大きな下落トレンドが発生したのちに反発という形を描いています。対円では米ドルも大きく値を下げた時期があったので、これはユーロの事情というより円が逃避通貨として買われた結果でしょう。

ここに、ユーロとの付き合い方に関する大きなヒントがあることにお気づきでしょうか。

アメリカでのトランプ政権誕生、ヨーロッパ諸国での右派勢力の台頭は、どちらも同時進行で起きた現象です。欧米ほどではないにしても、その他の国でも同様の傾向が見られます。

その中でドル、ユーロともに対円で値を下げたことが、今後の大きなヒントになると前回述べました。そうです、これが示しているのは「有事の円買い」です。もともと「有事のドル買い」「有事のスイス買い」といった言葉が市場では常識となっていましたが、米ドルが現在の状況にある以上、スイスフランだけが逃避先となるには少々荷が重すぎます。

そこで注目されているのが、欧米で巻き起こっている宗教対立と無縁な、日本の通貨・円です。キリスト教とイスラム教が対立を深めて戦争状態になったとしたら、日本は世界でも数少ない中立国になるのではないでしょうか。この視点はあまり語られることはありませんが、宗教的な要因での相場変動に関心が高い人ほど日本円を買っているという噂もまことしやかに囁かれています。

ユーロ圏に何かあった時には、日本円が買われやすい地合いであることは、FX投資家にとってとても重要なセオリーです。